Ryo1『ガ級潜水艦MS くろしお/ミンゴ』



私の名はガトー級潜水艦MS「ミンゴ」・・・ではなかった「くろしお」だ。
今日も大勢の若い兵士たちが体内に乗り込んで来るのを感じて目を覚ました。
着任当時は彼らがまるで私が人間であるかのようにしきりに話しかけてくることに
戸惑ったが、おかげで程なく新たな言語を全て覚えてしまった。
そう、彼らは私を創り出したアメリカ帝国の人間ではない。
僅か10年前まで滅ぼすべき敵であった元大日本帝国海軍の人間だ。
殺戮兵器である私には不思議なことであったが打倒した敵国を殲滅も植民化もせずに
盟友として迎え、軍事、経済の両面で活用するのが進歩的な支配のカタチということらしい。
その象徴的光景とでも言うべきか、設立されたばかりの海上自衛隊なる組織に
私のようなアメリカ帝国製兵器が貸与され、充実した訓練が日々繰り返されているのだ。
向上心に溢れメキメキと腕を上げる彼らを眺めていると嬉しさの反面、当然の疑念も過ぎる。
こうして砥がれた爪と牙はやがて再びアメリカ帝国に向けられるのでは・・・と。
実は連日の訓練に参加している兵士のなかには大戦中に私が撃沈した駆逐艦MS「玉波」の
乗員の兄弟や友人もいるのだが怒りや恨みのようなものを直接ぶつけられたことはない。
アメリカ帝国としては日本人のこうした我慢強く潔い民族性も十分に計算しているのだろう。
周到な占領政策によってアメリカ帝国に対する寛大でクリーンな先導者としてのイメージを
十分に根付かせたし、平和憲法という幻を与え戦争や武器そのものを憎むようにも仕向けてある。
しかし、それで押し通すには数十万もの「一般市民」を焼き尽くしたあの2発の新型爆弾は余計だった。
本当の悪意、悪行から目を逸らさせたまま続くこの歪な関係は100年後にはわかるまい。
訓練艦となり短距離FLTジャンプ能力を廃され、両の腕の魚雷も二度と飛ばない今の私には、
種を蒔き、芽を育てることしかできないが、そのときが来れば力を貸すことになるだろう。
私の名と記憶を継承した3代目、いや恐らくは4代目あたりの「くろしお」として。
創造主に歯向かって良いのか、と思わなくは無い。
だが私は兵器、生まれが何処であれ、所属陣営に尽くすのが定めだ。
提督LOVE? ・・・一体なんのことだか、わからないな。



■艦MSについてのレポート
一度完成した戦艦を敢えて海に沈め、再擬装を施し空中戦艦として竣工させるという
この文明の謎多き工法については戦艦大和のレポートの通りだが、その派生と思われる工法で
海に沈めた軍艦を人の形に再構築した「艦MS」と呼ばれる兵器の存在が明らかになった。
呼称についてはこの文明において一般的な人型兵器名と軍艦とを掛け合わせたものであると
推測されるが「艦MS」が女性型であることから「艦娘」との表記が非公式に定着したようだ。
非常に不可解な工法ではあるが、軍艦型から人型に変化した際に船体に対して主武装の占める割合が
大幅に増大していること等から戦闘能力の向上が達成されていたであろうことが伺える。
潜水艦MSの魚雷に至っては際立って大型化しているが継戦能力に全く支障が出ていないことから
次元装甲特急999の亜空間ゲートと同様のシステムが限定的に使用されていた可能性もある。
この「艦MS」工法に用いられた詳しい原理、テクノロジーについては全くの不明であるが、
「異星生命体から送り込まれたナノマシーンが戦艦信濃を取り込み、人型兵器にメタモルフォーゼした」「兵器を育てていく」等の「艦MS」の持つ特徴と類似性のある事象を記録した資料も発見されており
更なる検証が待たれるところである。(添付資料B:ハイパーウェポン2007参照)
( Blog :
機動兵器産業廃棄物 MS.AC.ZOIDS OR DIE)
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ありがとうございます。クラック塗料は初めて使ったのですが他では得られない表情豊かな効果が得られて楽しかったです。ほぼ一発勝負なのがドキドキでしたがチャレンジした甲斐はあったかなと思います。そして約1年が経過した今現在はコートの甘かったらしい部分が自然に剥がれてきていて完成時とはまた違った様子になってきていて面白くもあり恐ろしくもあります(笑)
>小泉さん
ありがとうございます。作り始めた頃はもう少し無難にというかコンパクトにまとめようと思っていたのですが、やっぱりサイズなどを気にして心残りができてしまうよりは思い切り理想のシルエットを目指した方が良いだろうと方針転換したので誉めていただけて嬉しいです。特に魚雷は元キットの値段がそれなりだったので最後まで躊躇していましたが良いアクセントになってくれたので奮発した甲斐がありました♪
>エビゾリさん
ありがとうございます。和と西洋の二面性というご指摘、自分では意図していませんでしたが思えば最初から胸部を光武にしようと決め込んでいたり頭部は無性に西洋甲冑風にしたくなったりと無意識にそういうものを目指す気持ちがあったのかもしれません。なんと言っても題材がアメリカで建造されて日本で運用されたという特殊な来歴を持つ悩ましい艦なのでそんな風に二つの顔をくろしおから感じて貰えたのはまさにピッタリという感じでとても嬉しいです♪