S3『彁行/Near Shaian』

この御神体がこの地へ降り立って以降
この土地一帯は稲作に適した大変豊かで質の良い土となった。
皆は神の恵みという。
彼から漏れ出す体液が地面にしみ込む事により大地が潤ったのだ。


動く気配はない。
族長は言う。
「彁行様はこの地を定住の場所として選んだ。我々にできる事は、
空から飛来した彼が心変わりしないよう、彼が留まり続けるよう奉る事だけだ。」

彼がこの地に降り立った理由としては、彼自身の意思で飛んできたのか、誰かが飛ぶ姿を夢想し、それに成功したのだろう。
今の僕たちにとって彼が再び飛び立たない理由は我々の信仰のお陰であると熱心な信者である叔父は言う。
そんなものはこちらの独りよがりな考えでしかない。
彼には彼なりのこの地に飛来した理由があるのだろう。
だがしかし、この御神体を軸とした信仰というものが集落の絆と団結を深めていることは事実だ。

もうすぐ鎮魂祭の時期だ。
彼が飛び立たないために私たちは結局奉り祈り続けることしかできない。
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まるで騎士が王に頭を垂れて忠誠と敬意を示しているようですy
佇まいに緊張感もあってかっこいいです。