tetu :『流骨』.story1
「見えないけれど確かにあるもの。実に美しいもので、この世界は満たされているようだ」
ーある罹患者の手記より抜粋。

story2
人間、底に落ちて初めてわかることもあるようだ。
世界から「気力」というものが失われていたことに人類が気づき始めた時には、すでに手遅れだった。
最近の若い者は、と幾世代も語られた文句を使うことで、本質が見えなくなっていたのだろう。恋愛、労働、自己肯定。そういった「前向きな気」が世界規模で失われてしまったのだ。
経済は衰退し、文化は停滞し、人口は減少し続けた。精神罹患者を修養する施設は、いたるところにみられた。
まだ気力の残った老人と、幾人かの奇跡的に「気」を保っていた若者は、この危機を回避するべく行動を開始した。


story3
「気」を可視化し、足りないものに再分配することを可能にした彼らは、その技術を結集させ、回収船「流骨」を作りあげた。
樹齢数万年ともいわれる巨木を中心に船体を組み、木自体をレーダーにすることで「気」の効率の良い回収を目指したのだ。
あらゆる動植物から発せられる「気」を左舷の「スポイト」から採集し、右舷の「管」に蓄え、その「気」をごく少量使うことで飛行した。(スペック上では「気」を一気に放出し、対象を破壊できた。これは「元気玉」と呼ばれたが、使用された形跡はない)
一度の飛行で数万人分の「気」を回収でき、固形物に変えられた「気」は、世界の若年層に優先して配分されていった……



story4
止まっていた世界は動き出した。
いつか、この老木も役目を終える日が来るのだろう。
開発者の一人である老人は、散歩の最中、大空を飛ぶ「流骨」を見た。
彼はそっと手を合わせると、しばらくそこに立ち尽くしていた。
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>えび反り23度 さん
ありがとうございます。東急ハンズで見つけた時は丁度良い形のが見つかったのでにやにやしながら帰りました。
>katoya さん
ありがとうございます。
異なる素材を使うのは実験気分で楽しいですw
>ノイ さん
コメントありがとうございます。
有機と無機の融合は以前からやってみたかったので今回はこういった形にしてみました。次はナマモノに挑戦してみたく思います。
>kurukuru さん
ありがとうございます。
後ろの枝は意図的にやってみましたが、下部の部分が白樺に見えるというのは予想外でした。新鮮な見方をありがとうございます。
>Yacchi さん
ありがとうございます。
航空機的なシルエットで作ってみようと思ったので、それっぽく見えていただければ成功です。楽しんでいただけたら幸いです^^
>JOSE26 さん
今回は楽しい企画を本当にありがとうございました。
ヒト型面白そうですね・・・次はそういったことも考えてみようと思います。
重ねがさねありがとうございましたm(__)m