おずねこ :『空中戦艦 阿含』
〈作品名〉
空中戦艦 阿含
〈ショートストーリー〉
飛行技術:飛行少年
飛ばない理由:反抗期

赤色灯と戦闘アラートのなか、ゴールドエイト艦長は上機嫌だった。
乗艦が「腐った未艦」とあだ名されていようと、あるいはどんなにヘドが出そうな仕様書を読んでも…
いわく『当艦、阿含〈あごん〉は波動実験の保険として、既存技術リボルバーを主砲とした試験艦である』
または『反抗期の飛行少年が発散する、周囲から浮く力がメイン浮力』
よって『艦橋には反抗心を高めるための教官を配置する』

すなわちこの大型艦は、一種の戦闘サイボーグなのだ。
大和級ZZ-Qの予備艦として建造され、コアユニットである人型の手足をもぎとった姿は、むくつけき磔〈はりつけ〉の囚人を思わせた。
“彼”の反抗心を高める装置、目の上のこぶ、すなわちゴールドエイト艦長は退役軍人だったが、今次大戦の教導員として復員している。
多くの練習艦を戦場に送り出してきた男の、これが最後の任務になりそうであったが、
「おまえのように満足に飛行訓練もせぬ者を、戦列に送れるか!」
『うるせぇ! 好きでやってんじゃねえよ、他に行くトコがねぇってんだ!』
“彼”の怒声が艦橋に響くや、また少し浮力が上がり、教官としての手腕が衰えぬことを知らせた。
逆らうことだけは一人前の阿含には、練習ごときはかったるく、飛ばない理由しか無かった。
そこへ、戦闘アラートなのだ。
おりしも釧路軍港の工廠を中心とした演習区画からは、主力の空中艦隊がいっせいに出撃したあとだった。
オホーツク海側からの伏兵ーー海底の悪鬼どもーーロシア所属艦。
「さっさとやる気を出さんか、阿含生徒、おまえ稚内の民間人を見殺しにするのか」
『あぁ、あぁ、あぁ…! わーったよ!」

阿含はしかし、その言葉とは裏腹にかつてない浮力と速度で係留を引きちぎる
と、ドッと初弾を水平線に撃ち込んでいった。
波動法の1/10にも満たないが、高火力を封じた砲弾を撃ち込む“連勝砲”は、その名の通
りの六連射と、実体弾ゆえの曲射が売り物であった。
衝撃・鳴動・振動。打ち方と同時に、メインエンジン・カウンター点火!
ゴールドエイトの仁王立ちは小揺るぎもしない。
「見えるのか? 阿含生徒」
『とっくに“百式”が先行してんだろうが! ヤツが垂れ流してくる!』
ロングまつげで瞳のないオペレーターロボット、通称“マツモト”が、
戦果ナシ、ナレド近海ヘノ被害甚大ニテ、陣形乱レリ、
という百式偵察機よりの報を伝えた。
艦橋の人影はこの二人のみ、艦の制御系はすべて阿含自身が行うため、人員は極
限まで省力化されている。

「30点だ、いつも言ってるだろう、当たる10キロメートルはハズレる1センチ
メートルより近い、と。この場合は…」
阿含は豪笑でかき消すと、
『試しだ! 試射だよ今のは! 連中に接近して仕留める!』
最大船速で進行を始めた。
それでいい、と艦長は上機嫌で独りごちた。
もう送り出すだけの立場はまっぴらだ、と。

大日本帝国海軍 空中戦艦 阿含ーー宇宙世紀0088年ごろ、飛行少年を集めたパイ
ロット養成艦“アーガマ”の和名に由来するという。
詳しい戦果は伝わっていない。
〈了〉
〈製作記〉
本家ZZ-Qのリスペクトとして、大和級の一隻として妄想を進めました。
甲板の艦載機、Zeta Gundamに懐かしのガンコレを使ったので、想定スケールは1/400です。
製作方法は行き当たりばったりの原始的なミキシング…という感じなので、使用パーツのみ列挙します。
アリイ1/600武蔵(船体)、アオシマ1/1トイガン44マグナム、ハセガワ1/32セイバー(船体下部のブレード状パーツ)、ハセガワ1/72スカイホーク、バンダイHGUCZZガンダム、バンダイMGキュベレイ、バンダイ1/72コスモゼロ、その他航空機と戦車など、船首(フィギュアヘッド)にメタルフィギュアの翼とハネモノの真珠、素露紋超特急のフラグは小林先生のTwitter素材より
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なんとか完走できてほっとしています^^
今回で飛ばないも第三回め…というコトで、結構ひねったネタも多かったように思います。
前回同様、見応えのある展示ですね〜。
あ、あと文章を適当に区切ってくれてどうも^^
ちょっと長いねやっぱ^^;
>毒猿さん
いっぺん王道系を作ってみたかったので、まとまってくれて良かったです^^