エビゾリ :『Judgment』
異なる無数の平行世界のはなし
「あと5分で短距離転送実験を開始する、各員チェックリストの最終読み上げを開始しろ。」
これまでのテストピースを使った訓練とは違い無人ではあるが実際の揚陸船を転送する実験に
誰しも緊張感を漂わせていた。
「夙川のゲイトが開くまで2分15秒」
ゲイト基地から転送予定座標までかかる時間は約0.0007秒
光の速さに近い速度での転送がおこなわれようとしていた。
「艦長!!」
「箕面より入電、実験は即時中止、34.66,135.39へ急行せよと…」
「全員に告ぐ、実験は中止、実験を中止しろ!!」
淡路沖での転送実験を中止した豊中型高度戦術実験艦‐梅田‐は東へと進路を取り大阪へ向かった。
「舞洲か、いったい何があった?」
「夢洲間で空母十三が消息を絶ったとの事です」
すぐ近くの南港基地から捜索隊が既に出ているはず、実験を中止してまで我々が向かう意味とは…
あまり良くない考えばかりが浮かんでいた。
「艦長、まもなく南港上空を通過します」
「艦長っ!!」
「夢洲上空に飛行物体!」
「なんだ、アレは…」
「レーダーには捕捉されていません!」
「飛行船に船が付いています」
「馬鹿者っ そんな事は誰にでも分かる」
‐失われた古代文明‐のエピソードにしばしば登場するLZ129 HINDENBURGとRMS Titanic
の容姿そのままの飛行物体であった。
「艦長、案内しろといってきています…」
「なんだ?何を言っている?」
「たどたどしくよくは分かりませんが ”選ばれしものが千年旅から帰った……まで案内しろ”と。」
しばらくこの場で艦を待機させ参謀本部へ報告をする事としたが、困惑を重ねるばかりで
正直のところ事態が把握できない状況にあった。
「はい」
「承知いたしました 閣下。」
「我が艦の全員は機密保持レベルをクリアしております。」
参謀本部議長ともに予測の事態と、そういった上層部の対応に我々が呼び寄せられた意味
も合わさって不安よりも不信感のほうが強まってきていた。
「これより謎の飛行物体を‐東京‐へ誘導する」
「富士を越えるぞ!」
「全員配置に就け!」
人類が~文字を失った暗黒の百年~以前の当時迷宮都市とも呼ばれていた‐東京‐
「運命の時から、まもなく千年…」
「 Þórr が人が力の象徴としていた戦艦をハンマーで地中深く埋め
私に千年間の教えを受ける旅に出るよう指示してからもうそんなになるのか…」
「地球…何もかも皆懐かしい」
謎の飛行物体は古代文明の大いなる遺産‐東京‐にあるランドマークに舳先を着けると
ゆっくり離れて行き近くで停まった。
「しばらくすればこの天秤で Þórr が私の持ち帰った知恵とあなた方のこれまでの行いを計ります」
「 Þórr の裁きを待ちましょう」
おわり
special thanks toおずねこさん
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